政治の怖さ
2013年12月19日
猪瀬都知事が辞意を表明しました。徳洲会病院を巡る選挙違反事件がこんな形で広がっていくとは誰が想像できたでしょう。当初、私は猪瀬さんに何とか踏ん張ってもらって東京オリンピックの準備に奔走してほしかったのですが、東京都が筆頭株主である東京電力が運営していた東電病院の売却という話が出てくると、これは見過ごすことが出来ないでしょうね。しかし、政治というのは恐ろしいですね。ジャーナリストで歯に衣を着せず誰に対しても切れ味がよかったあの猪瀬さんが選挙に出ると決めてから人が変わってしまうのですから。東電病院の売却を要請していた東京都の知事になろうとしている人物が、病院経営をしている徳洲会のトップから個人的にお金を借りるという事が拙いという事くらい想像できると思うのですが、それさえ麻痺させてしまうのが政治なのでしょう。(しかし、東電が病院を持っていたとは知りませんでした。徳洲会もただのタニマチではありません。)
先日、「謎解き 張作霖爆殺事件」を読みました。昭和3年6月4日に起こった当時満州を支配していた軍閥の大元帥、張作霖が北京から奉天への帰路、乗車していた列車が爆発炎上し暗殺された事件の真相に迫る本です。
この爆殺事件、我々が歴史で教わったことは、日本の当時満州に駐留していた関東軍が起こした謀略事件という事でした。事件直後から、日本の謀略だと日本政府も半ば認め、首謀者とされた当時関東軍高級参謀の河本大作本人も戦後自白をしています。また戦後行われた東京裁判でもこの事件は取り上げられ、別の日本人の証人によっても日本軍の起こした事件として補強されています。この様な半ば「事実」とされてきた事件が、70年も経った現在、覆されようとしています。詳しい事に興味ある方はぜひお読みください。
冷戦終了で旧ソ連の内部資料が公開され、また当時のイギリスの公式文書から見られる事実、また事件直後の写真の検証によって明らかにされたことは今まで公式に「事実」とされてきたこととは全く違う「事実」が提示されています。読後の私の感想ですが本当の事実はどうだったのか、ミステリアスな部分は多く含まれますが少なくとも日本軍が主導してこの事件が起こったのではないことは間違いないようです。コミンテルン、国民党政府、中国共産党、それに関東軍と、この四者の思惑の中で起きた共同謀議というのがその答えのようでした。
とにかく、政治というのは複雑怪奇ですね。表に出ている事実を鵜呑みにするととんでもない間違いをしてしまいます。最近ではイラク戦争の大義名分となった、大量破壊兵器の有無に関しても大変な間違いがありました。誰かの謀略だったのか、単なる勘違いだったのか、いずれにしても恐ろしい話です。こんな中で日本の国益を守るために戦う政治家に求めるものは何か、を見誤ると無能な政治家のせいで日本を亡国に導くことになるかもしれません。

謎解き「張作霖爆殺事件」加藤康男著 PHP新書