弱り目に祟り目
2015年10月10日
居酒屋で全国展開をしているワタミの経営危機が取りざたされています。二期連続で経常赤字になると財務制限条項に抵触するらしく(もう抵触しているのかもしれませんが)、それを何とか回避するため、最近の収益の柱である介護事業を他社に売却するという話が浮上してきています。公表されている資料によればそもそもの原因は本業の居酒屋部門の既存店の売り上げ不振にあるとのこと。その遠因として、従業員の自殺に端を発し創業者の発言が火に油を注ぐ結果となり、ブラック企業と騒がれた件も影響しているのかもしれません。
以前、ある居酒屋経営者が言っていたのですが、既存店で一旦売り上げが落ちてきたらその売り上げを元に戻すのは不可能に近いと聞いたことがあります。売り上げがピークを打ったら撤退や売却を考えるというのがセオリーだと。どこの世界も厳しい戦いがあるのですね。
しかし全体的において、既存赤字店の閉店の話や今回の介護事業の売却の話も、どちらも時期をずらしているというのが私の印象です。もう一年早く行動を起こしていたらもっと違った展開になったのではないでしょうか。
「経営の中身もわからない人間が何を言う!」と言われそうですが一店一店既存店売り上げが下がった時点で撤退をするという厳しさを貫いていたらこのような結果になってないような気がするのです。もし、ワタミという企業が介護事業、宅配弁当事業がなく居酒屋一本で事業展開をしていたら居酒屋事業に突き詰め、シビアな決断をしていたのではないでしょうか。
「狡兎三窟」という故事があります。賢いウサギは天敵から身を守る為の穴を三つ作るという話から生まれた言葉です。まあ、日本でいうところの三本柱でしょうか。これは事業に関してだけではなくスポーツの団体競技においても強いチームを作る時に重要な要素になりますよね。プロ野球で言えば、ピッチャーでも打者でも三本柱がいるかどうかでペナントレースを優勝することができるかどうかを左右します。大変重要なことなのです。が、それができたばかりに、そのこと自体が逆に七難を隠してしまうとも言えます。そしてそれが大きな落とし穴になってしまうことがあります。三本柱のうちの一本が悪くても他の二本が良ければ全体としては悪くはないですから、一つ一つに対して突き詰めて考えなくなり、そこに油断が生まれるのです。本来の「三窟」は三つの穴がなければなりません。三つの穴がしっかり逃げ場所として確保されていなければ「三窟」にはならないのです。まして、本業としていた事業が赤字となればこれは大変な事態です。そこに経営陣がいち早く気付いてもっと早く手を打っていれば違った状況になっていた気がします。まあ、言うは易く、ですか。
冒頭での風評が想像以上の逆風となったのかもしれませんね。創業者が主人公となった小説が世に出、またマスコミに全面的に露出することで事業の多角化を推し進めた分、それが良いように作用しているときは力となりますがそれが逆に作用したら企業の存続にも影響を与えるということなのでしょう。
禁断の果実ですかね・・・・は。