本と末
2015年12月20日
東芝の今期の最終赤字が5000億円という予想が日経新聞に掲載されました。途方もない金額ですが、東芝の純資産の約半分が吹き飛ぶというのですから深刻な問題です。今期すべての膿みを出してV時回復を目指すという話なのですがその為に、事業部門の売却や従業員を最大7000人削減するという記事も出ていました。
部外者が聞いていても到底納得できない話なのですから株主や社員の気持ちに立ったら正に「怒髪冠を衝く」の心境なのではないでしょうか。
経営者のミッションは、その経営に携わる会社を継続反復して利益を出し続ける体制を整えることのはずです。その経営者が本来なら現体制では赤字が出、または将来赤字になる可能性があり、その問題を解決させる為会社の体制を抜本的に変革しなくてはならないときに、その損失を隠し何が問題なのかさえ分からない状況で会社を運営していたなど、考えられません。我々中小企業がこんなことをすればでは即、死を意味します。そんなことが世界にその名を知られている大企業で行われていたなど、到底許される話ではありません。それで従業員を削減?これはどう考えても犯罪でしょう。
巨大企業になると会計処理の仕方が複雑になり、色々なプロジェクトをどう評価するかによっても利益が大きく左右されますから経営トップはその粉飾に気が付かなかったということはあり得るのかもしれません。しかし、どんな企業も経営トップがどこを見ているかによって下の人間の動きは変わります。
たとえばトップが結果にこだわると会社全体が結果を求めるようになり、トップがプロセスを重視すると会社全体がプロセスを重視するようになります。たとえば、居住用賃貸で運用している会社があるとします。社長がその不動産を単なるお金を生む箱だと考える会社だと社員もそう行動します。その為、不動産の管理にお金をかけません。逆に社長が賃借人に快適な住空間を提供する対価として家賃をいただいていると考える会社だと社員もそう行動し不動産の管理に十分投資をします。この二つの会社、現在の結果として利益は同じであっても持っている物件の質を考えたら将来雲泥の差になるはずです。
決算上の利益は結果でしかありません。本と末でいうと末です。本があるから末が出るのです。会社がどのように運営されているかの把握よりも、決算の結果ばかりに気を取られていると下が感じたら結果ばかりを重視する会社となり、現実の数字とトップの求めている数字に差異があると机上の数字合わせにあくせくすることになるのです。そして
決算自体が数字合わせなのですから何が問題点であるのかすら、わからない状況で数年を費やしてしまうという何ともお粗末な結果になるのです。
今年一年、小保方さんの事件に始まり、とにかく偽装が多い一年でした。偽造というのは人を欺くことであり、モラルの点で許されることではありません。しかしこれが企業で起こった以上、決して個人の問題ではなく会社全体の姿勢の問題なのです。つまりトップの問題なのです。他山の石としなければいけません。
今年一年、有難うございました。都心のマンションは値上がりしましたね。来年はどんな年になるのでしょうか。どんな年となっても充実した毎日を送りましょう。