シャープの再建
2016年03月21日
シャープの再建問題が再燃しています。今年に入って日本の政府系ファンドの産業革新機構の経営再建案か台湾の鴻海精密工業の支援を受けるかでシャープの経営陣は協議を繰り返し、2月末に鴻海精密工業の支援を受けることを決定しました。この決定をするまでは鴻海側は会長が日本に訪問して、「今日中に契約をする!」などと派手なパフォーマンスをしておきながらこの決定がなされた後は、一転態度を変え、シャープの出してきた資料の中で将来的に負債になる可能性のある「偶発債務」が存在するとして契約を保留にし、支援の受け入れを決定してから三週間後には支援金額の減額を打診してきているという報道がなされています。
数年前にも、内容が違えども同じような話があった気がします。増資の引き受けを承諾しておきながら株価が下がると引き受け金額を引き下げたり、条件を変更してきたりとか。交渉上手というのか、狡いというのか、わかりませんが過去にそのようなトラブルがあったにも関わらず、シャープの経営陣は何故契約もしていないのに鴻海の支援を受けると公表したのでしょうか。契約をするまで産業革新機構のオファーを断らなければ二つの選択肢を持ったまま鴻海と交渉できたはずです。ところが鴻海の支援案に決定したと公表したせいで産業革新機構が再建案を撤回してこの再建支援から手を引く旨の発表があり、これでシャープはその再建案は鴻海案しか選択肢がなくなってしまいました。そうなってしまってから鴻海に手のひら返しをされて足元を見られる事態になったと見えるのは私だけではないはずです。正に「二階に上がってはしご外される」です。
一代で世界的な企業に育て上げた経営者にとっては、経営者として赤字を出し続ける結果しか出せないサラリーマン社長を手玉に取るなど、朝飯前なのでしょうね。
リーマンショックが起こった時、世界中の金融機関が破綻の危機に瀕しました。その時、リーマンブラザーズに続きモルガンスタンレーまでも破綻の可能性が出てきたとき、世界中の銀行の中でモルガンスタンレー株の増資を引き受けると手を挙げたのが三菱東京UFJ銀行でした。なんとその金額は9000億円、あの金融危機の最中ですよ。その後、その増資発表により株価が落ち着きを取り戻すかに見えたモルガンスタンレー株はその後も急落し当時倒産寸前の株価になりました。株価の急落を理由に増資の引き受けを中止する選択もあったはずです。しかし三菱東京UFJ銀行は条件変更のうえ引き受けを実行しました。下手をすれば株主代表者訴訟になることも考慮の上だったのでしょう。結果的にはこの決断が一連の金融危機を落ち着かせる英断となりました。頭取はオーナー社長ではありません。そう考えると、サラリーマン社長だからとか、オーナー社長だからということはあまり関係ないのでしょう。経営者がどういう資質を持っているかその会社の運命は決まるのですね。シャープの問題は本当に歯がゆいです。企業同士の信頼がない状況で買収など上手くいくものなのでしょうか。一体シャープはどうなってしまうのでしょう。