只今
2009年03月09日
そろそろ年度末が近づいてきました。年度末と言うと、人の移動の時期であり賃貸売買共に最も忙しいシーズンとなります。また売買では新築マンションの引渡しにも重なります。
当社グループで購入契約していた新築マンションの引渡しに際し、手付金を没収されることで契約を解除しました。
手付金だけでも、数千万円の損失です。「阿呆な業者だな」とお叱りを受けますかね。仕方ありませんね。
新築マンションは未完成物件での売出しがほとんどで、また特に大規模マンションの場合は早く、契約から引渡しまで2年というものさえあります。契約して2年も経つと不動産事情は様変わりすることがあります。
ほんの2年前には契約した物件が完成した瞬間に、右から左に1割、2割と分譲価格より高値で取引されたりしました。
が一昨年の7月頃を境に不動産価格が停滞し始め、去年の1月頃にははっきりと下がり始めました。
ですから、一昨年に契約した新築物件は、引渡しを受けたとたん、一割、二割と含み損を抱える物件も散見されるようになりました。
当初はその新築マンションもひとたび引渡しが終われば中古マンションになります。購入した新築マンションの中古としての取引を促すきっかけになればと思い購入したのですが、引渡しを受けた瞬間大きく損をしてしまう物件の契約を完了するのは不利だと判断し手付金を投げることで売買契約を破棄しました。
こんな話をすると、「手付金を投げるなんてもったいない」「いずれ良くなってきたら値段が戻るんだからとりあえず買っておけば・・」中には「残代金を払う金が無いの?」と言う意見も聞けそうですね。
なぜ、手付金を投げるのか?少しだけ見栄を晴らしてもらえば、お金が無いわけじゃありません。経済合理性のためです。確かに手付金を投げるのはもったいないです。返してもらえるなら返してもらいたいです。しかし、契約は契約、約束事は変えることは出来ません。
そこで、選択の問題となります。手付金を入れて契約をしたのは、過去のことです。この過去を変えることは出来ません。現在取れる選択肢は、二つ、一つは残代金を払って引渡しを受けること。もう一つは、手付けを投げて解約をすることです。
もし第一の選択を実行に移した時に、当社が受ける損失は手付金の何倍にも達すると判断しました。だから、解約したのです。
こうやって読んでいると「当たり前のことだ」と思われる方がほとんどでしょう。ところが実際には買ってしまわれる方が多いのです。理由は色々ありますが、やはり大きな要素は、大切なお金を投げてまでして買わない選択をすることに対する抵抗感なのではないでしょうか。勿論、どうしてもその物件で無ければ駄目だと言うのならその選択も間違いではないでしょう。でも、何度も言いますが新築マンションは買ったとたんに中古マンションになるのです。そしてそれは取りも直さず近隣の中古マンション相場に左右されることを意味します。
築年数が1〜2年経っている同クラスの近隣のマンション価格より2割以上も高い金額で取引されることはありません。なら手付けを投げて近隣で2割〜3割安い同格の中古物件を買ったほうが得なのですが・・・「もったいない」と言う意識がより傷口を広げてしまうのですね。
どのときでも一番大切なことは「現在只今」です。過去の決断に「只今」が拘束されてはうまくありません。今まで巨額のお金をつぎ込んだと言うただその理由だけで、赤字になることが分かっていながら運営を続けていた「かんぽの宿」のように。