カジノの怖さ
2011年11月28日
大王製紙の元会長による巨額借り入れ事件が世の中を賑わせています。「100億円もの金を高々一年余りで負けるものだろうか」「他の理由で使ったんじゃないか」などという意見を聞いたりするのですが・・・・真相は私には分かりません。が、おそらく本当にカジノだけで、しかも一年ではなくほんの数ヶ月で場合によってはもっと短い期間で大きく負けてしまったのではないでしょうか。
ギャンブルというのは恐ろしいものです。それを経験したのは16年以上前です。社員旅行でゴールドコーストに行ったときのことです。当時、ゴールドコーストに旅行するのは2回目、コンラッドホテルのカジノを経験したのも2回目、初めてのカジノではないので初体験のときとは違いその場の雰囲気に飲まれることなくカジノを楽しんでいました。参加したゲームはバカラ、「カジノの王様」とされるカードゲームです。簡単に言うと日本で言うところの「丁半博打」、ディーラーが行うカードゲームをバンカー対プレイヤーの戦いでどちらが勝つか予想するゲームです。今までもこのゲームで5千円勝った、一万円負けたと結構楽しめたのですが、その時は、びっくりするほどツキに恵まれどちらに賭けても面白いように当たるのです。2〜3時間の間で何と200豪ドルが10000豪ドル以上になったのです。そのときの私はもう有頂天、まるで「俺はひょっとしたら天才ギャンブラーなんじゃないか」とうぬぼれてしまっていました。何故か、それは勝った金額ではなく周りが作り出す雰囲気です。そのカジノのテーブルに着く外国人が私を賞賛し、私が賭ける同じ目に賭けるようになったからです。「アンビリバボー!!」なんて言われるともう天にも上る気分になります。そして潮目が変わるときが来ます。続けて3回連続で負けて、仕切りなおしにトイレに行きました。後で振り返ってみればその時止めていればよかったのです。「冷静に、冷静に」と鏡に向かって口ずさみ戻ったテーブルで何故か大勝負を賭けてしまうのです。しかも一回のかけ金が2000豪ドル、そのテーブルで一回に賭けられる上限金額です。そして5回連続で負けました。私は3時間かけて稼いだチップをものの5分で全て失ったのです。本当にその日は悔しくて眠れませんでした。翌日、気を取り直してカジノに行くのですが・・・これが全く面白くないのです。一回のかけ金で2000豪ドル、当時一豪ドル65円位でしたから13万円を賭ける勝負を経験してしまうと一回1000円の勝負等では、緊張感が違うのでしょう。と言って一回13万円を賭けるお金を持っているわけではありませんから結局止めてしまいました。もし、あの時、カジノ側が「お金を貸しますよ」と言われたらどうなっていたか想像するだけで怖くなります。(一介のサラリーマンにそんな事を言うはずありませんが・・・)
以来、済州島、ラスベガス等、海外旅行でカジノに行くことはあっても真剣にカジノでギャンブルをすることが出来なくなりました。
人によっては「ギャンブルは人生のそのものだ」と言います。私も正にそのとおりだと思うのです。賭けに負けた人間は相手にされず、勝った人間にはお金だけではなく周りからの賞賛がついてきます。そして、厄介なのはこの周りからの賞賛です。周りが作り上げるイメージに自分が縛られてしまうのです。ギャンブルであれば「天才的な勝負勘の持ち主」などと言われ、人生では「成功者」等と持ち上げられます。そして、自分で勝手にその他人が作り上げたイメージ通りの行動に縛られるがために冷静な判断能力を失ってしまうのです。「天才ギャンブラーは、負ける事がない」等、お笑いです。
ギャンブルというのは、究極の自己管理が要求されるゲームです。私は、あのゴールドコーストでの魔の5分間を乗り越えるだけの自己管理が出来る人間になれるでしょうか。ギャンブルに関しては多分無理でしょうね。5回連続で負けた時、最後の2回、私を賞賛していた外国人たちが私の賭けた目とは逆の目を賭けていたことは忘れられないです。これが世の中ですね。