浪速のことも夢のまた夢
2012年07月16日
豊臣秀吉の辞世の句の一部です。日本の歴史上おそらく日本一の出世をし、百姓から天下人となった人の最後の句がこれです。いずれ来る徳川家の時代、それに伴う豊臣家の最後を予想したのでしょうか?それとも、あっという間に過ぎ去った自分の人生全体を振り返って出た言葉なのでしょうか?
「露と落ち 露と消えにし わが身かな 浪速のことも 夢のまた夢」
何とも言えない哀愁を醸し出す句です。
先日、自宅にある本を整理していたら西武グループとセゾングループについて書かれた本が出てきました。堤兄弟の確執から袂を分かったそれぞれのグループがどのような成長戦略を立てているのか、またそのリーダーの特徴が書かれている本です。思わずこの本を読んだ時代を思い出し、読んでしまいました。どちらかというと圧倒的な資産背景を持つグループの跡取りとなった堤義明氏よりも、資産背景の乏しい中セゾングループを広げてきた堤清二氏にスポットライトを当てている本でした。時代は、日本のバブルの絶頂期、その本の中ではインターコンチネンタルホテルを3,000億円近くで買収するなど清二氏の経営手腕は称賛されていました。その記述を見ていると胸が痛くなりました。そのグループが十数年後には解体に追い込まれるのですからね。時代は読めるものではありません。
最近では、リーマンショックがありました。一年以上前から燻っていたサブプライム問題が一挙に恐慌にまで発展しました。影響が少なかったはずの日本の平均株価が一か月で半分近くまで下がりました。又、リーマンショックの半年前に上場を果たした不動産会社や理論上倒産などするはずのないリート(不動産投資信託)が民事再生を申請するという異常事態が起こりました。しかしリーマンショックの2年前、サブプライムローンの問題が世界を揺るがす大事件になるとは、いったいどれだけの人が予想できたでしょうか。
映画の「バックトゥザフューチャー」のように未来に行くことが出来れば、将来を見ることができ、未来に起こる出来事に対して準備することもできるのでしょうが、それはかなわぬ夢です。精々できることと言えば、目の前の現象に振り回されないようにすることくらいです。
「マージンコール」という映画があります。リーマンショック前夜を題材にした映画で不動産担保証券の評価で債務超過となりかけているインベストメントバンクが他の金融機関にその劣化した証券を全て売り抜けることで危機を乗り切ろうとする話なのですが、それがきっかけでパニックが起こるのです。参加者全員でコントロールすれば解決できる問題である場合でも、誰かが故意に、または我が損失を最小限に抑えようとする行動が引き金となって他の全員が反応してしまいパニックを起こし大事件に発展する、その連鎖反応の先に誰も想像できないような結果が表れるというのが恐慌なんでしょうね。
冒頭のあらゆる出来事をチャンスに変え、天下人となった秀吉の辞世の句、小さな達観ではなく、大きな達観で人生を終えたいものです。