最大の敵
2012年08月03日
オリンピックが始まりました。物心がついてから、かれこれ10回目のオリンピック観戦となります。やはり年を取るにつれ感じ方が変わってきます。最近では公式戦203連勝をし、不敗のまま引退した不世出の柔道家、山下泰裕さんが現役時代に言っていた「最大の敵は自分自身」、この言葉が観戦するキーワードになっています。
今大会、柔道の男子ではあと一階級を残し、まだ金メダルゼロです。金メダルゼロという結果より日本のお家芸として金メダルは取れるという、日本人の期待を背負って、
大変なプレッシャーの中での戦いであることは分かっているのですが、「自分」の柔道をしていないように感じます。「勝ちたい」「負けられない」という気持ちが先に立ち、地に足がついていない感じがします。年齢も、20代です。そのような年で不動心を持てというほうが無理なのは重々承知しているのですが、ついつい期待してしまいます。又、少数ではありますが、そういう柔道をしている選手がいます。残念ながらフランス人でしたが。組み手争いをせず、たとえ延長になろうと焦らず自分の柔道をすることに終始していました。その背中には「自信」という文字が見えたような柔道でした。
オリンピックというのは他のスポーツ大会とは明らかに違います。4年に一度、しかも個人というよりは、国を背負うという側面があります。この国を背負うという意識が、選手にとって、今まで味わったプレッシャーとは質が違う重圧になるのでしょう。見ていて可哀そうになるくらいです。
勝つためには、ともすれば押しつぶされそうになる重圧を跳ね返すほどの心の強さ「剛毅」の「毅」の部分、内面の強さが要求されます。特に金メダル候補と前評判が高い選手ほどその傾向があります。柔道に関しては、おそらく他の国の金メダル候補と比べてもその注目度は全然違うのではないでしょうか。日本ではオリンピックと云えばまず柔道ですから。
心の強さ、それを別の言葉で表現するなら「自信」。
「自信」自分を信じるという事は簡単に見えて中々できないことです。伝説の横綱双葉山でさえ連勝記録が潰えたとき「いまだ木鶏足らず」という言葉を残しています。名だたる名選手、名力士でさえ課題となるのがこの「自信」なんですね。だからこそ、選手のどのような外的要因に対しても泰然自若として無心で事に当たる姿勢、それに触れたとき、私は大変な感銘を受けるのです。所詮、自分以上の自分にはなれないのです。また今がなければ次はないのです。「今」この瞬間を無心で戦う姿を見せてほしいです。勝敗はともかく。